さくらの記憶

ここ関西地方では4月は桜の花の咲く季節と誰しも思っています、そして入学・入社と人生のスタートのときでもあります。
桜の開花のときは短く、人生もまた宇宙的時間で見れば一瞬にしかすぎませんが、桜樹は人間よりはるかに長寿です、なかには一千年を越えるものもあり、それらの木々を眺めるとき人と桜の生命の違いが伝わり、木々には悠久とも言える生命力が蓄えられていることに底知れぬ安堵感が生まれます。
桜は特に人とのかかわりが強い樹です、ここでは桜の記憶を聞いてみたいと思います。

奈良県大宇陀・天益寺 「しだれ桜」 350年
(2007年)







天益寺(てんやくじ)は鎌倉末期から室町時代に創建された茅葺の本堂が、1999年放火されて全焼してしまいました、現在再建途上にありコンクリート製の基礎までは出来上がっています。
そんな放火を見てしまった桜ですが何も語らず記憶の中に閉じ込めています、いったいどれほどの歴史を見てきたのでしょうか。


奈良県大宇陀・又兵衛桜 300年
(2007年)








戦国勇将・後藤基次(又兵衛)は数奇な人生を送りましたが、武将としての生涯を全うしたことで長く人々の記憶に残っています、そんな彼の屋敷跡といわれるところに咲く桜は、今年は例年より満開の花も少なく寂しい印象を受けましたが、かえって後藤又兵衛の心情を語っているように思いました。


京都府南丹市・常照皇寺 九重桜 約5〜600年
(2005年)



2007年には枯れた「九重桜」




2005年に枯れてしまった「御車返しの桜」


北朝の第一代・光厳天皇は南北朝の歴史にもまれ、上皇職を経て引退後は出家して、京都北山の奥、周山の東にある常照皇寺を建てて隠居しました、後水尾天皇の御車返しの桜は枯れてしまいましたが、この桜は今なお何とか花を咲かせています、二つの巨木が眠りに付いてしまうとき、人々は南北朝を経て貴族社会から武家政治へと変わっていった、歴史とともにあるこの寺も忘れ去られてゆくことでしょう。
(ついに2007年にこの桜も枯れてしまいました、多くの観光バスが来る名所でしたから人災が死期を早めたよう思っています、今は見られないいたいたしくも咲く最後の姿です)



京都府南丹市・常照皇寺門前 (2005年) 約1〜200年?



このしだれ桜の咲く京北町は、日本海にそそぐ由良川上流の沿岸になり、更に北上すると黒田発電所や黒田の百年桜、そして民家のしだれ桜など多くの名花がありますが、そのうちでもこの桜が最もロケーションがよく見栄えがします。



奈良県宇陀市榛原区 仏隆寺 (2008年4月・エドヒガン桜)


850年に空海の高弟・堅恵が創建した室生寺の末寺の一つ、空海が中国から持ち帰った茶の種から日本茶の発祥の地といわれます。桜は樹齢900年、高さ13m・幹周り7.9m、幹は11本に分かれています。
危なっかしい崖っぷちにありますから、人が植えたものではなく野生種として根付いていったように思え、大変親しみを覚えます。






奈良県宇陀市室生区 西光寺 (2008年4月) 室生古道にあり「城之山桜」とよばれる枝垂れ桜・樹齢300年




奈良県宇陀市室生区 大野寺 「小糸桜・しだれ桜」


681年役小角が創建の古刹、磨崖仏と樹齢300年のしだれ桜で有名、
句碑は奈良県出身の阿波野青畝 「春山の 巨岩弥勒と なり給ふ」




兵庫県養父市大屋町 「樽見の大桜」 (2009年4月・国の天然記念物)


1822年に出石藩の儒学者・桜井舟山が「仙桜」と名づけたこの桜は樹齢1000年、高さ20m・幹周り6.3mのえどひがん桜、平安時代の初期には既に咲いていたこの桜の最も盛んなときは江戸・元禄時代だったそうです、もはや自力では立っていられない老齢ですが、地元の人々の心栄えがこんなに力強く花を咲かせています。

かっては桑畑であった急坂を登ってゆくと見上げる空に高々とそびえています、地元の人々はボランティアで大勢出ておられて、駐在さんともども駐車場の管理や一方通行の案内をなさっており、大樹のほとりには立派な展望台までしつらえてありますが、小さな目立たない寄付金箱があるだけで、この桜に寄せる人々の思いが一層心打つものになりました。あいにくの曇天でちょっと哀しそうな桜になりましたが、一千年の思いをお伝えします。










兵庫県豊岡市竹野町椒(はじかみ) ほそき神社の麻蒔(おまき)桜(エドヒガン桜・2009年4月)


この地方ではこの桜が咲くと麻の種を蒔きはじめたそうです、残念にもここへ行ったときには既に花は散ってしまって葉桜に変わっていましたが、樹齢5〜600年の樹は兵庫県一の大木と書いてあり、大変興味深いありさまでした。



道路沿いに立つ大桜






ほそき神社と樹皮だけの幹をワイアで支えられています




2010年 岡山県真庭市 「醍醐桜」700〜1000年


「醍醐桜」を前日の夜から見に行きました、中国道真庭インターから、ものすごい車の行列に桜に近づくまでに3時間以上監禁状態になりました、この桜は岡山県の天然記念物に指定され、新日本名木百選にも選ばれた見事な桜で、根元周囲9.2m、樹高18m、 後醍醐天皇が隠岐配流の際その姿を讃えたことにより名付けられたと伝えられています。このときの二日間は桜より人を見に行ったようなありさまで、いい桜でしたが雨のせいでお見せできるような画像ではありません…。





2011年4月10日 徳島県美馬郡つるぎ町 「吉良のエドヒガン」樹齢400年


なんども出発を延ばしながらやっと満開に出会えました、ここは剣山(1713m)から吉野川へ入る貞光川の西側、山深いところにあります。この木は幹周り4.5m、樹高約20m。枝張りは東西約23m、南北19.2m、県の特別記念物です。






滋賀県甲賀市信楽町畑 「畑のしだれ桜」


樹齢約400年といわれるこの桜は、平家の滅亡・織田信長の焼き打ち・徳川家康の隠密街道などの説があります、信長の焼き打ちに遭った寺院跡といわれるところにたった一本、近隣の人々に大事にされて見事に咲いていました。



2012年4月16日 咲く寸前で木が紅く染まっていました



4月24日 前日の強風で二分ほど散っていました



さて、来年はどんな桜と出会えるでしょうか


滋賀県・琵琶湖西 海津の桜  2013年4月


今年の桜の開花は早くて一本の古木をwatchするのが難しくあきらめました、3月末に琵琶湖の湖西を車で走っているとき、海津を通りましたら桜並木の蕾が固く、いつ咲くのか注意していますと4月14日(日)に満開になることがわかりましたので、湖上から桜並木を眺めてから歩くことにしました。
海津の桜はすべてソメイヨシノの50〜60年生、遅咲きで有名らしく、見事な咲きっぷりでした。








岡山県北部の桜  2014年4月
2010年に行った「醍醐桜」より4Kmほど北方に「岩井畝(うね)」の桜はあります、満開の報を聴いて出かけました。



北房(ほくぼう)ダム(人造湖)のソメイヨシノ


岩井畝の大桜



アズマヒガン 樹齢800年 径6.5m・樹幅23m・樹高14m



村の人達が大事にしておられました



アズマヒガンは小さな可憐な花が特徴です



幹に比べて枝が細いのは右側の枝が天災に遭ったのでしょう


黒岩の山桜(蒜山高原)樹齢700年 樹高16m



山桜はまだつぼみ堅し:お墓の真ん中に立っている姿は力強く恐ろしい迫力



大昔に木刀で打って枝を割いてしまったといういわれがあります



どこからが根っこでどこが幹かわかりますか?


チョットタイム:
こうしてみてくると長寿な桜はエドヒガンの種類になりますが、エドヒガンは日本・台湾・中国にある野生種から園芸種になったものだそうで、しだれ桜もエドヒガンの変種です。
日本の五大桜古木は全てエドヒガン桜で、現在どこにでもある桜の多くは「ソメイ吉野」桜ですが、これはエドヒガンとオオシマ桜でつくられた園芸種です。

日本五大桜古木:石戸蒲ザクラ(埼玉県北本市)三春の滝桜(福島県田村郡三春町)山高神代桜(山梨県北杜市)狩宿の下馬ザクラ(静岡県富士宮市)根尾谷の淡墨桜(岐阜県本巣市)


2015年3月 琵琶湖北岸の桜


今年は入院していたこともあって、遠方へ古木の桜を訪ねる気力が湧かず、一昨年ウォーキングで行ったおり見逃していた桜を見に行きましたが、アズマヒガン以外は時期的に早く感動的な桜には出合えませんでした。



海津の桜(ソメイヨシノ)と残雪の山



清水(しょうづ)の桜:お墓の中に樹齢300年



奈良時代創建の古刹・酒波寺の行基桜 樹齢400年



通りがかりに出会った立派な桜


2016年4月:奈良県宇陀市・仏隆寺千年さくら、京都市平野神社(←クリック)


2017年4月:三重県の桜

2018年4月:富士山と桜

2019年3月:泉州の桜(泉佐野市日根野)


地福寺のしだれ桜:枯れた巨木の根っこに接樹して60年、こんな立派に咲きました



いつまで見ても見飽きない桜でした



慈眼院の姥桜:大阪府随一の古木。400年以上の幹回り3mの空洞から新しい枝(160年)が樹高13mに花咲かせています、鳥居は日根神社


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